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医師国家試験2021⑩D19

2021年11月20日(土)

【医師国家試験2021】
医師国家試験問題の解説をいたします。
D19
58 歳の男性。か月前からの右眼の視力低下を主訴に来院した。視力は右0.1(0.3 ×ー1.0D、左 0.7(1.2 ×ー 1.0D)。眼圧は右12mmHg、左 11mmHg。前眼部、中間透光体に異常を認めない。カラー眼底写真別冊No. 2A、蛍光眼底 写真別冊No.2B、黄斑部の光干渉断層計(OCT)像別冊No.2Cを別に示す。
この患者に対してまず行うべき治療はどれか。
 
a 強膜内陥術
b 硝子体手術
c 光線力学的療法
d 抗 VEGF薬硝子体注射
e 副腎皮質ステロイド内服
 
【正解】d 抗 VEGF薬硝子体注射
 
【診断】網膜静脈分枝閉塞症
 
【解説】光を受け取る網膜の表層は網膜中心動脈により養われ、動脈と静脈はいくつもの所で交差しています。
高血圧などで動脈硬化がすすむと動脈が静脈を圧迫し、静脈が破綻して出血します。これが網膜静脈分枝閉塞症です。
高血圧が最大のリスクファクターで、この病気を機に未治療の高血圧が見つかることも多いです。
 
網膜周辺部に起こる場合には無症状の時もありますが、中心部に近いところではかなり視力が下がります。
また出血するだけなら良いのですが、破綻した血管から様々な成分が漏出して、嚢胞性黄斑浮腫、漿液性網膜剥離を引き起こします。
さらに血が通わない部分が出てくると(無冠流領域)、虚血の状態となり新生血管や増殖膜がはってきます。新生血管から出血し硝子体出血となり、増殖膜が網膜を引っ張り牽引性網膜剥離となり、糖尿病網膜症と同じことが起こってくるのです。
 
治療としては無冠流領域をレーザーで焼きます。最近レーザーは不要であるとの報告もありますが、重症例では新生血管や増殖膜によって治療がとても困難になります。そのため自分の考えとしては、やはりレーザー治療は必要と考えています。
 
黄斑浮腫に対しては、ステロイドのテノン嚢下注射や抗VEGF抗体の硝子体注射を行います。
ステロイドは安価ではありますが、白内障と緑内障の合併症を引き起こす場合があります。
現在の第一選択はVEGFを阻害する抗体薬(生物学的製剤、分子標的薬)を硝子体内に注射をします。
点眼薬では網膜には届かずに、内服薬では目に届く量が微量であるため、眼球内への注射が必要です。
血管透過性が低下し、効く人は浮腫が改善し、劇的に効果があります。
ただ良いことばかりではありません。
永遠と薬が効き続けることは無いので、毎月の注射が必要です。
また薬価もとても高く、それが毎月となると払えない人も出てきてしまいます。
落ち着けば数ヶ月に一度に延長することもできます。
収入によりますが、あとで医療費が返ってくる高額医療費制度という国の救済制度があります。
諸外国と違って、日本は本当にすばらしいなとつくづく思います。
 
長文をお読みくださり、ありがとうございます。
一緒に眼科のお勉強をいたしましょう!
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