お知らせ

Notice

医師国家試験2021⑧C39

2021年11月6日(土)

【医師国家試験2021】
医師国家試験問題の解説をいたします。
C39
65 歳の男性。3日前からの眼痛を主訴に来院した。20歳ころに右眼を強く打撲したが、その後問題なく生活していた。半年前から右眼の視力低下を自覚し、1か月前からほとんど見えなくなったが、仕事の都合で医療機関を受診できなかった。全身所見に異常を認めない。視力は右眼前手動弁、左 1.0。眼圧は右 53mmHg、 左 15mmHg。右眼の眼底は透見不能である。右眼の前眼部写真別冊No.7 を別に示す。 行うべき治療はどれか。
a 抗菌薬投与
b 強膜内陥術
c 水晶体摘出術
d 眼球マッサージ
e 全層角膜移植術
 
【正解】 c 水晶体摘出術
 
【診断】 急性緑内障発作、水晶体脱臼
 
【解説】眼球は水風船のように眼内に眼房水が流れて一定の眼圧を保っています。正常は10-21mmHgで、それ以上になると目の奥の神経を圧迫し視野障害を起こす緑内障という病気になります。
緑内障には様々なタイプがあり、眼圧が上がらない正常眼圧緑内障というタイプもありますが、ここではそこまでは説明しません。
 
眼房水の出口が何らなの原因で閉塞してしまうと、眼房水が出ていかなくなり著明に眼圧が上がります。これが急性緑内障発作で、緊急的に閉塞を解除して眼圧を下げる必要があります。
閉塞する原因として、もともと水の通り道(隅角)が狭い人(遠視の人が多いです)や、ぶどう膜炎などで炎症が起きて虹彩がくっついてしまう、炎症で後ろの毛様体が腫れて押される、など様々あります。
この症例では眼外傷の既往により、おそらく眼内の水晶体を支える紐(チン小帯)が切れて水晶体が前方変位し隅角を閉塞してしまったと考えます。
 
これは薬剤では良くなりませんので、隅角を閉塞している水晶体を摘出する手術が必要になります。
水晶体が濁る病気が白内障です。通常の白内障手術では混濁のみを取り除き、水晶体の袋と紐(嚢とチン小帯)を残して、そこに人工レンズを留置してきます。
 
この症例では1ヵ月前からほとんど見えないとのことです。白内障がかなり進行していたと想像します。白内障は水晶体が濁るだけではなく、大きく膨化してきます。膨化した水晶体が前房を後ろから圧迫し、隅角を閉塞したと考えます。
もしかして支える紐(チン氏帯)の脆弱で、水晶体が前方へ偏位して、隅角を閉塞しているのかもしれません。その場合は超音波による白内障手術が行えない場合があります。
通常の超音波を使った白内障手術ができない場合は、傷口を大きく開いて、水晶体を摘出する嚢外(内)摘出術に変更します。
また角膜も高眼圧のため浮腫となり、視認性が悪く難易度も高いです。
 
もし自分がこの症例を手術するなら、硝子体手術の機械をあらかじめ用意して、何が起きてもいいように対応しながら、白内障手術に望みます。しかし硝子体手術の機械は高額のためどこの施設でもあるわけではありません。
 
長文をお読みくださり、ありがとうございます。
一緒に眼科のお勉強をいたしましょう。
眼科,仙台,おすすめ,近くの眼科,いい眼科,仙台眼科,眼科仙台,太白区眼科,眼科太白区,白内障,緑内障,医師国家試験,国試,国家試験,2021, C39,緑内障発作,急性緑内障発作,白内障手術,

西多賀眼科医院SNS
  • 西多賀眼科医院 Facebook
  • 西多賀眼科医院 Twitter
  • 西多賀眼科医院 Instagram
  • 西多賀眼科医院 Ameba blog

ページトップ