Notice
2022年11月13日(日)
【医師国家試験】2022-D42
48 歳の女性。両下肢筋力低下を主訴に来院した。1年前に右眼視力低下があり、眼科で加療されて症状は改善した。3日前から両下肢の脱力感としびれ感を自覚していた。これらの症状が徐々に悪化し、本日起床時に起き上がるのが困難となったため、夫が救急車を要請し入院した。意識は清明。血圧 112/64 mmHg。脈拍 80/分、整。胸腹部に異常を認めない。神経診察では脳神経領域に異常を認めない。上肢には麻痺はなく、腱反射は正常である。下肢筋力は両側の近位筋、遠位筋ともに徒手筋力テストで 2 程度に低下している。下肢腱反射は亢進し、Babinski徴候は両側陽性である。胸骨下縁から下で温痛覚の低下がみられる。血液所見、血液生 化学所見に異常を認めない。脳脊髄液所見は細胞数 69(多核球 60、単核球9)/mm3(基準0〜2)、蛋白 62mg/dL(基準 15〜45)、糖 62mg/dL。胸椎 MRIの T2強調矢状断像別冊No.14Aと病変部の水平断像別冊No.14Bを別に示す。 診断に有用なのはどれか。
a MPO-ANCA
b 抗アクアポリン抗体
c 抗ガングリオシド抗体
d 抗筋特異的チロシンキナーゼ抗体(抗 MuSK 抗体)
e 抗アミノアシル t-RNA合成酵素抗体(抗 ARS抗体)
【正解】b 抗アクアポリン抗体
【診断】視神経脊髄炎
【解説】
細胞にはナトリウムなどの電解質を通すチャネルという通り道があります。それにより細胞の中と外の環境の違いを調整しています。
水だけを通すチャネルがあります。それがアクアポリンです。それを発見した人がノーベル賞をもらいました。
アクアポリンにもいくつか種類があって、アクアポリン4に対する自己免疫疾患、それが視神経脊髄炎です。
視神経と脊髄に強い炎症を引き起こします。
重症例では、両眼失明し歩行も困難になります。
とても可哀想な病気です。
検査としては、MRIで3椎体以上(背骨3個分以上)の長い範囲に脊髄炎を認めます。
採血検査で抗アクアポリン抗体を認めます。
視神経炎は、見た目では通常の視神経炎と変わりません。
しかし治療しても改善してこない場合はこの病気を疑います。
治療としてはステロイド大量療法です。
改善がない場合は血液を一度洗い流す血漿交換療法を行います。
ここ10年くらいで提唱されてきた比較的新しい病気です。
ついに医師国家試験に出題され、医学生にも常識として扱われるようになりました。
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